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判事の所得も課税?

(会報Argentina 第44号、2004年4月-(社)日本アルゼンチン協会)

このタイトルを見る限り、アルゼンチンでは裁判官たちの給与は課税されていないと思われてしまうが、実は憲法上の規定とその解釈で例外的に連邦及び州判事の所得は完全に非課税扱いになっている。しかし今、政府のイニシアチブによって議会上下両院で激しい議論がかわされ、審議もかなり進み、課税の方向に動いているようだ。

憲法第110条は、判事の給与はいかなる理由があっても削減してはならないと規定されているため、これを厳密に適応して税金を納める必要もないと拡大解釈している。一部の判事はいかなる政府又は政権の政治的関与も阻止し、司法の中立を保つためとこの解釈を支持しているが、ここ数年判事の汚職スキャンダルが相次いだため国民はこの根拠にあまり納得していないのが実状である。

現在、連邦判事が900名、州判事が7.000名在職しており、すべての裁判官から所得税を徴収すれば約1億ペソの税収アップになるという計算である。720億ペソという税収からみれば微々たる金額であるが、政府が特例で失業者世帯主に対して支給している給付額(予算)の3分の1に当たり、国民が求めている所得格差の是正という観点から、政治的なインパクトも大きい(ペロン党のミゲル・ピチェト上院議員の主張)。

1994年にこの例外措置を規定していた法律は破棄されており、税法の識者は税務当局が課税の手続きを取り、通知するだけで十分だという見方も強まっていることで、問題はどこまで課税するのか、給与だけにとどめて諸手当を非課税にするのかという「政治的決着」をねらう議論も議会で行われている。

いずれにしても、現時点では判事会(組合的な役割を果たしている団体)は課税に真っ向から反対しており、課税が法制化されても保全処分を申し立て最高裁まで上告するとにらみを利かしている。

◇メモ:1932年に所得課税法が制定された際にいかなる例外も認めないとされたが、ロドルフォメディーナという判事が国を相手取って訴え、36年に最高裁は原告の主張を認めた経緯がある。

アメリカでも同じ議論があったが、1939年から判事の所得も課税されている。
労働法の専門家も以前からこの非課税例外措置は違憲であると論じており、1994年には、この例外を規定していた政令を破棄した。しかし、最高裁はまた、この政令を司法府のみに無効とした。 (c)JAM

◇少ない予算でのやりくり:

判事の高い汚職率、裁判の実施があまりにも遅いという実態、政治的な事件への連邦判事に対する疑惑、そして最高裁人事の政治問題化等が司法府全体に対する国民の不信を招いている。また、組織的にも人的にも慢性的な財源不足であるため裁判所というものは市民や各当事者の権利主張や不公平感の是正にあまり役立っていないというイメージが強いようである。

司法行政のスムーズな運営と機能強化に司法府は毎年11億ペソの予算を要求しているが、7億ペソしか当たえられていない。その結果インフラ整備も不十分であり、一部の建物はかなりの老朽化で最低限の作業もできず、人材の訓練や研修などは完全に後回しになっている状態である。

また、司法キャリアを目指している法学部卒の新入職員は、入所数年間はほとんど無報酬に近い状態であり、今も1.500人が正式な任命なしで働いている。扱う事件によって、担当判事にスタッフやパソコン、OA機等が与えられるが、すべてその時々の政権が政治的に優先課題であるか否かと判断するかによって左右されることが多いという。

州レベルでも状況は変わらず、最も豊かなブエノスアイレスでも、州最高裁の事件になると判決順番を決定するための抽選でさえ二年はかかるそうで、一部の政府関係者が提言しているように受付時間拡大や1月の司法休暇短縮だけでは司法全体の解決にはほど遠いと言わざるを得ない。

(c)JAM 松本 J. アルベルト

 
 
 
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